ここ数年、日々の制作業務でデータのDVD-Rでのやり取りがほぼなくなったため、PCに接続してあったDVDドライブを取り外しました。そして、数年前まで、毎年、50枚近いCDを購入していましたが、CDへの物欲が低下したのか、ここ数年、全く買わなくなってしまいました。
なぜDVDドライブを使わなくなったのか
ここ数年、仕事でのデータのやり取りを、オンラインストレージサービスやクラウド環境で行うようになり、DVDドライブを使う機会がめっきり減りました。
数年前ならインターネット上で数GBのデータのやり取りをすることなんて想像もしていませんでしたが、今となってはそれが普通の光景になりました。それにより、PCに接続してあったDVDドライブを取り外したことで、購入したCDを音楽アプリに取り込む手段がなくなりました。
正しくは手段がなくなったわけではなく…
CDを取り込みたいときだけ、DVDドライブをPCに接続すればよいのですが、1度外してしまうと、CDを取り込むたびにDVDドライブをPCに接続するのが億劫になってしまったようで、PCに取り込まれずに放置されているCDが大量にあります。
DVDを観る機会が減っているのではないか
DVDを観るにはテレビにDVDプレイヤーを接続するのが当たり前でした。しかし、Netflix、Amazon Prime Videoなどの動画配信サービスが登場し、多くの動画配信サービスはスマートフォンで閲覧することが可能になっています。
それにより、テレビ、DVDプレイヤーが不必要になったと考える人が増えたとしてもおかしくはありません。
サブスクリプションの登場
2020年からのコロナ禍を経て、様々なWebサービスがサブスクリプション(サブスク)を導入したことで、手元にCD、DVDがなくても観たいときに、聴きたいときに、自分のタイミングで利用できるようになりました。
また、コロナ禍もCDを買いつつ、CDは未開封のままサブスクで聴いていましたが、「CDを買う必要あるのか?」と自問自答状態になり、最終的にCDを買わなくなったのだと思います。
今でもアーティストを応援する意味で「CDを買う必要ある!」と考えていますが、きっとコロナ禍による未来への不安感が、そういう気持ちを萎縮させた可能性は否定できません。なにより、サブスクを利用すれば自宅に物が増えないという魅力に抗うことはできませんでした。
また、サブスクは毎月払い続ける必要があるとしても、比較的低価格で設定されています。これは「数万円のDVDボックス」を買う場合と比較した場合、サブスクの利用を検討する大きな動機となるでしょう。
サブスクリプションとは
「サブスクリプション(Subscription)」とは英語で「会費」を意味し、サブスクを利用し続ける限り「利用」できるもので、契約者は作品を所有しているわけではありません。
サブスクは契約した瞬間から利用できる便利な反面、サブスクを解約、または、サービス提供側の都合、仕様により、
- 配信停止の可能性
- オフライン再生の制限
- 動画配信サービスが終了するリスク
などのデメリットがあります。
そのため、いつでも作品を観たい、聴きたい場合は、CD、DVDを購入しておく必要があります。
サブスクで所有欲はどうなる?
人間には大切なものは手元に置いておきたいという「所有欲」があります。大切な物に囲まれて過ごすことで幸福感を得られることが期待できます。
サブスクの利用が浸透していく中で、作品を手に持つことができなり「手元に置いておきたい!」と所有欲が刺激され「もしかしたら、世の中は物質主義に戻るのでは?」と期待していました。しかし、思いの外、ペーパーレス、チケットレスなど様々なものがデジタル化する中で手に持てないことに慣れていたのかもしれません。
自分自身を含め「聴けなくなったら、観れなくなったら、それはそれで仕方がない」と割り切るように意識が変化しつつあったようで、サブスクでも一定の所有欲が満たされているのかもしれません。
それにより、CD、DVD(Blu-ray)などは売れなくなるため製造されなくなり、デジタル配信が当たり前になることは、未来の話ではなく、現在進行系で進んでいるのだと思います。
そして、1人1台のスマートフォンを所有しつつある流れの中で、サブスクを利用する流れを変えることはできないと感じています。
無形制作物だらけの世の中に
僕は長年、Webサイトという「無形制作物」を作り続け、「紙媒体のように自分の作品を手で持ってみたい」とのコンプレックスに近い思いを抱いて過ごしてきました。
そんなコンプレックスへの反動から、2019年から缶バッジ、シール、トートバッグなどの雑貨を作り始め、様々なイベントに出店し、販売をしてきました。しかし、サブスクの登場により、現代人の所有欲が変容していく未来は確実に目の前に迫っています。
これからの変わりゆく所有欲にどのようにアプローチして、雑貨を作り、販売していくのか…
予想できないできない状況を迎えています。
所有欲はなくなったのか?
では「人間の所有欲がなくなったのか?」と考えると決してそんなことはあり得ません。では、なぜ所有できないサブスクの利用が増加しているのでしょうか。これは、人間の意識が「所有欲」から「利用欲」に変化しつつあるのではないかと感じています。
現代生活は「断捨離」「整理整頓」「ミニマリスト」などが頻繁に話題に上がるほど、物で溢れた状態になっています。
「聴きたいけど、観たいけど、部屋の中に物は増やしたくないしたい」と考える方が増えた結果、「いつでも利用できる」という安心感とも言える利用欲が所有欲の代替えをしていると感じています。
まとめ
様々な物がデジタル化していく中で、従来の所有欲が再び戻って来る可能性は低いと思います。それでも、人間から所有欲がなくなることはないと考えており、今後は所有欲と利用欲がバランスを取りながら変化していくと考えています。
そして「音楽はサブスクで聴くけど、応援しているアーティストのグッズは必ず買う」など、今まではCDを買うことで満足していた方々の意識を変容させる可能性が考えられます。
そんな、これからどうなるか分からない所有欲の未来を想像しながら、僕も雑貨製作に邁進していく所存です!