「インターネットの質が低下した」と言われる昨今ですが、なぜ「インターネットの質が低下した」と感じるのか、本当に質が低下しているのかを考えてみたいと思います。

そのためには、まず、僕が1997年から2024年までに経験してきたインターネット上でのコミュニケーションの方法を整理してみようと思います。

1997年のインターネット

僕が初めてインターネットに触れたのは1997年の「NIFTY-Serve」でした。

現在でのインターネットと同様かというと、そうではなく「パソコン通信」と呼ばれるもので、電話回線を利用しダイヤルアップ接続を行い、現在のインターネットの通信速度に比べて極めて遅かったと記憶しています。

「NIFTY-Serve」はフォーラムと呼ばれるオンラインコミュニティのような感じでした。感覚的には、現在のSNSでのやり取りには近いものの、テーマごとのフォーラムを見て、文章でやり取りをしていました。

今のインターネットでのコミュニケーションでは簡単にできることができませんでした。ファイル容量が大きい写真、動画は送ることはできず、基本的にやり取りは文字のみでしたが、どこか遠くにいる人と繋がっているという感覚で毎日ワクワクしながらやり取りをしていました。

現在では普通になっている通知機能はなく、また、当時のインターネット接続は常時接続でははなく接続時間に応じて料金が必要な従量制だったため、1日に数回、モデムを介して接続し、必要な情報をダウンロード後に回線を切断して、通信料金を使いすぎないように注意していました。

また、接続中は電話回線を占有してしまい、自宅に電話がかかってきても不通になるため、電話回線を長時間占有しない意味でも意識的に利用時間を抑制していました。

僕のインターネット体験は、今から考えると決して快適とはいえないものの、様々な技術的制約の中で、会ったことのない遠方のやり取りができることへの興味が勝り、文字だけのシンプルな交流を楽しんでいました。

その後もインターネットの技術とWebサービスは変化を続け、Webサービスは「全体」への提供から「個」への提供に変化していくような感覚の中でTwitterに新規登録することにしました。

初めてのSNS

初めてのSNSは2004年頃に触れた「mixi」でした。この頃のインターネットは1997年に比べて通信速度は大幅に高速化しており、画像ファイルのアップロードもほぼ問題なかったと記憶しています。

当時の携帯電話(フィーチャーフォン)にはカメラ機能はありましたが、現在のスマートフォンに搭載されたカメラと比べると比較にならないほどの機能しかなく、高画質での撮影もほぼ不可能でした。また、携帯電話で閲覧できるWebサイトも限られていました。

当時のmixiも携帯電話で閲覧できたような記憶がありますが、僕はmixiの閲覧は基本的にPCで行っていました。

mixiも初期のfacebookもテーマごとに「グループ」「コミュニティ」があり、自分の興味がある「コミュニティ」に参加をしてやり取りを行う仕様になっており、今思うと、パソコン通信の影響を感じることができます。

Twitterに登録

僕がTwiiterにアカウントを作ったのは2009年でした。

今思うと、2009年までにインターネットにいた人たちは、PC、インターネット、プログラム、デザインなどに一定以上の知識を有している人たちが多く、各Webサービスで炎上するようなこともほとんどなかったと記憶しています。

タイムラインがほとんど動かないということはなかったものの、今よりは静かなタイムラインでした。それが、2010年頃から急に活発になった印象があります。

この事は、2010年から2012年にかけてスマートフォンのシェアが急増(平成29年版 情報通信白書)したことに影響している可能性がありますが、僕が「インターネットが少し変わった」と感じ始めたのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災以降のように感じています。

SNSを介して、災害情報の共有、被災者の助け合いなど、新たなコミュニケーションの形が生まれ、インターネットの持つ性質が情報収集からインフラに近いものに変わった印象があります。

また、災害発生時などに愉快犯による混乱を招く情報発信、著名人を偽った情報発信も目立つようになりました。

Twitterの登場は、インターネット上での情報の流れを一変させ、個々のコミュニケーションがより即時的に、そして広範囲に及ぶようになりました。これにより、社会との関わり方が変わった印象がありました。

また、個々の繋がりが強くなったことで「インターネットは全世界に繋がっており誰でも閲覧できる」との従来の常識を認識できない利用者が増加したようにも感じていました。

インターネットに求められていたもの

元々インターネットは利用者の性善説、集合知の信頼性に基づいた設計がなさせていましたが、利用者が増える過程で、どうしても利用者のモラル、知識にばらつきが出始めます。

そのことから「インターネットの質が落ちた」のではなく、利用者の増加に伴い、多種多様な人たち、モラルが低い人たちが集まったことで「悪貨は良貨を駆逐する」に近い状態ではないかと感じています。

インターネットに潜む危険性

インターネットへの接続がPCに限定されていた頃は、インターネットに接続するために、それなりの知識が必要でしたが、スマートフォンの登場により、スマートフォンを購入した時点で、誰でもインターネットに接続できるようになりました。

これは、特別な技術、知識がなくても、誰でもインターネットの恩恵を受けることができるという点で、非常に重要なことですが、それにより、インターネットのセキュリティリスクなどの知識がない場合は危険性が高まります。

現実世界なら「何時以降にあの辺りに行かなければ危険性はない」みたいな防衛策が可能ですが、犯罪者は毎日のように大量のメールを送りつけ、著名人のふりをして儲け話を持ってくるので、自衛だけでは防げない部分があります。

また、利用者が増えれば「金を騙し取ってやろう」と考える犯罪者もインターネットを利用し始めます。それにより、インターネットは治安が悪化し、「インターネットは危険な場所」と考える方が増えていると感じています。

会ったことがない方からの「簡単に儲かる」「あなたのことが好き」などは概ね詐欺であると考えて、自分なりの自衛方法を意識することが大切です。

ダークパターンについて

ダークパターンとは、ユーザーインターフェース(UI)に、ユーザ(利用者)が混乱、勘違いを招きそうなデザイン、レイアウトにすることで、サービスの提供側に有利な行動を取らせる手法を意味します。

決して新しい手法ではなく、無料アプリなどのインストール時に「ウイルス対策アプリをインストールする(30日間無料)」にチェックが入っていることに気が付かずに、利用者に意図せず、アプリをインストールさせる、などがありました。

Windows98の発売の前後から以降、インターネットを利用する方が増えたと考えると、2024年で25年以上が経過しています。

それにより、利用者のネットリテラシーが向上し、情報の取捨選択をするようになった結果、広告バナーをクリックする方が減っているように感じます。

そのため、インターネット広告を配信、掲載する側はクリックされるように、広告をクリックしないとページ遷移ができないなどのダークパターンを取り入れたWebサイトを見かけるようになりました。

また、昨今では「ウイルスに感染した」「簡単に儲かる」などの詐欺広告も増えており、よりインターネット広告を嫌悪する方が増える悪循環に陥っているように感じます。

通常の広告だけではなく、ダークパターンの広告も増加傾向にあり、見たい情報を邪魔をする要素が増えたことで「インターネットの質が低下した」と感じやすくなっている可能性があります。

まとめ

今回は「インターネットの変容」は論点ではないため、考察、言及はしませんが、僕自身、2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、意見に見せかけた暴言、一方的な主張、陰謀論などが急増したように感じています。

その後、2020年1月に発生した新型コロナウイルスの世界的な流行により、さらにSNSが先鋭化したような印象を持っています。

「インターネットの質が低下した」と感じる感覚は、インターネットの技術的進化などの問題ではなく、コロナ禍などを経てインターネットの急速なインフラ化などにより、インターネットを利用する側の感覚が状況の変化に追いつかないことが要因の1つになっている可能性があります。

また、セキュリティリスクへの対策として、ログインなど様々な認証作業が複雑化しており、場合によってはスマートフォンがないとアカウント登録が難しい場合も出てきました。

これらの変化によって「使いづらくなった」などと感じることで意識が変容し、インターネットの質が低下したと感じているのかもしれません。

きっと、これからも、災害、戦争、世界恐慌、宇宙人襲来など、人類の日々の生活を脅かす状況になり、不安が増大するたびに、インターネットは変容し続けるのだろうと感じています。

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    2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市にて、Webサイトの制作、更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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