検索サイトで何かを検索する場合、自分自身の日頃の行動を考えると、
- 検索結果に表示されているWebサイトを確認する
- 検索結果に戻る
を交互に繰り返していることに気が付きました。また、検索結果の上位5点程度のWebサイトを確認して、求める情報が得られない場合は、検索する単語を調整して、再検索する傾向にありました。
普段から自分が無意識にこの行動をしているのなら、他の利用者も同じような行動をしている可能性があると考えて「なぜ自分が検索結果を上から順番に追いかけ、求める情報が掲載されていないと判断した瞬間に次の結果に進んでいるのか」を考察してみることにしました。
考察をする前にいきなり結論というわけではありませんが…
これは「情報の即時性」を求めた行動ではないかと推測しています。そして、そういう行動をするようになったきっかけとして、インターネットのユーザエクスペリエンスの変化が影響しているのではないかと考えました。
ユーザエクスペリエンスの変化
検索結果への信頼性
僕は無意識に検索サイトが提示した検索結果に一定の信頼を感じているのではないかと思います。検索結果には、自分が探している情報が掲載されたWebサイトが表示されていると考える傾向にあるように感じます。
そのため、自分が求めている情報が掲載されていないと判断した時点で検索結果に戻るのではないかと考えています。
サイト内検索を使わない
Webサイトによってはサイト内検索が実装されていますが、僕はサイト内検索を利用せずに、検索サイトからの検索を試みます。これは、検索サイトへの信頼性に加えて、サイト内検索の多くが、検索サイトのような曖昧な表現、表記の揺らぎなどに対応しておらず、入力された文字を完全一致で表示する場合が多いことが考えられます。
情報の即時性への欲求
制作業務などで検索サイトを利用して情報を探している場合、すぐにでも「求めている情報」や「答え」に辿り着きたいと考えています。そのため、検索結果に表示されたWebサイトが以下の条件を満たさない場合、直ちに検索結果に戻り、次の情報源を探る傾向があるようです。
- 掲載されている情報量が多く、すぐに探し出せない
- デザイン、レイアウトが複雑
- コピー&ペーストをして利用できる形式で情報が掲載されていない
この即時性への欲求は、検索サイトが天気予報や国の首都、面積などの情報を直接検索結果に表示することでさらに強化されてしまい、結果としてWebサイトへの訪問機会を減少させ、Webサイトへのアクセス数増加の難易度を上げてしまったのではないかと感じました。
つまり、Webサイトの運営側の視点で考えると、検索結果に表示された情報で満足をして、Webサイトに訪問しないため、アクセス数が増えない問題を引き起こしている可能性があります。場合によっては、スニペットを見て、探している情報に辿り着いてしまうことがあります。その結果、数千ページあるWebサイトでも、アクセス数の増加が難しくなっているような気がしています。
検索結果への信頼性が高い一方で、現在、インターネット上には、膨大な量の情報が溢れかえっており、求める情報にたどり着くのが非常に困難になっています。情報を探すにも時間を要することが増えてきました。そう感じているタイミングで、AIの利用を始め、自然言語検索で情報を表示してくれる利便性、情報の探し方を一変させる可能性が出てきました。
情報を集約、整理して提供してくれるAIの登場
僕は大量の情報から必要な情報、自分が求めている情報だけを探し出すことは苦手な傾向があります。また、インターネットには毎日大量の情報が公開されており、常に情報過多の状態であることがさらに拍車をかけています。そのような状況の中で大量の情報から、必要な情報だけを抽出して、会話のような自然言語検索によって利用できるAIの登場はこれまでの情報収集を一変したと言えます。
過去に「今北産業」というネットスラングがありました。この言葉は、インターネット掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」から生まれた「今来たばかりなので、スレッドの流れを3行で(= 簡潔に)教えてほしい」を意味しています。インターネット老人会会員として、大量の情報を処理した上で要約して伝えてくれるAIは現代版「今北産業」のように感じることができます。
情報を精査しなくなる未来
しかし、AIは瞬時に情報を表示する一方で、その情報が常に正しいとは限りません。AIもまだ発展途上にあり、情報源の信頼性や真偽を完璧に見抜くことはできません。
そのため、AIの利便性に慣れてしまうと、情報精査を怠り、AIが提示する情報を鵜呑みにしてしまう怖さを感じています。そして、インターネット上に、正しい情報よりも誤った情報が多く掲載されている場合、AIは誤った情報を正しい情報として学習する可能性が高くなるため、情報の精査がさらに難しくなるのではないかと感じています。
そして、なにより、誤った情報はAIにより強化されてさらに拡散され、学習データは汚染され続けることで情報の正確性が失われる危険性があります。この問題は近い未来に表面化するか、すでに進行状態であると感じています。例えば、健康に関する誤った情報が拡散されると人々の健康を害する可能性があります。また、政治的なフェイクニュースが拡散されると、社会不安や混乱を招く可能性が考えられます。
人間の認知の特性とAI
人間は見えない情報を認知することが苦手だったり、「認知バイアス」と呼ばれる、自分が信じたい情報や感情的に共感できる情報を受け入れやすい傾向があります。また、分かりやすい説明を受け入れやすい性質から、質問した内容を簡潔に要約して伝えてくれるAIが提示した内容の真偽を精査せず、そのまま信用してしまう可能性があります。
自然言語処理技術が優れたAIであれば、人間のように振る舞うことができるため、AIを擬人的に感じ取り、信頼してしまうかもしれません。それにより、認知バイアスが強化されてしまう危険性が考えられます。
まとめ
インターネットの普及とAIの登場は、情報収集のあり方を大きく変える可能性を示唆しています。
従来の検索方法とは異なり、AIとの会話のようなやり取りで、膨大な情報に瞬時にアクセスできるようになり、効率的に情報を得られるようになりました。しかし、その一方で、情報の真偽を見極めることや、情報に振り回されないことが、これまで以上に重要になっています。
情報過多の現代においては、検索結果に表示された情報だけを鵜呑みにせず、情報源の信頼性や情報の正確性を確認する習慣を身につける必要があります。これは、AIが提供する情報にも当てはまります。AIは便利な存在ですが、あくまでも情報を処理する道具であり、その情報をどのように解釈し、活用するかは、利用者の行動に委ねられています。
AI技術は今後も進化を続け、情報収集のあり方はさらに変化していくことは確実です。しかし、情報の本質を見極める力(情報リテラシー)は、AIとの共同作業においても変わらず重要です。AIの利便性を享受しつつも、提示された情報を鵜呑みにせず、批判的な思考力を養い、膨大な情報と向き合っていく必要があるでしょう。