スマートフォンに様々な通知が押し寄せ、SNSを開けば数秒おきにタイムラインが更新されることが当たり前になりました。情報があふれる現代社会においては、「コストパフォーマンス(コスパ)」だけでなく、「タイムパフォーマンス(タイパ)」も重視されるようになってきました。
情報を正しく伝えたいとの思いから、ブログでは基本的に「スマホ(スマートフォン)」「コンプ(コンプリート)」などの略語の使用は避けていますが、文字数や分かりやすさを重視して「コスパ」「タイパ」と表現します。
では、「タイパ」とはどんな意味を持つ言葉なのか考えてみたいと思います。
タイパについて
タイパとは、費やした時間に対して得られる効果や満足度を表す言葉です。コスパが「価格」と「価値」のバランスを重視するのに対し、タイパは「時間」と「価値」のバランスを重視するという点で異なります。
「時は金なり(Time is money)」という言葉があるように、時間は金銭と同じように重要なものと捉えることができます。「時は金なり」は、本来、時間を無駄にせず有効活用することの重要性を説いた言葉です。しかし、現代では「時間をお金で買う」という考え方もあるように感じます。
例えば、高速道路や新幹線を利用して移動時間を短縮したり、家事代行サービスや外食を利用したりすることで、自分の自由な時間を増やすという意味で使われることもあります。時間に追われる現代人にとって、タイパはコスパとは異なる意味を持つように感じます。そこで、今回はタイパについて考えてみたいと思います。
タイパを求める心理とは
そもそも僕がタイパについて考えるようになったきっかけは、
情報過多の現代において、情報を探すにも取捨選択に時間がかかる。そのため、限られた時間の中ですぐに結果を得たいという欲求から、タイパが重視されるようになったのではないか
のような疑問を感じたことでした。
では、人間はなぜタイパを求めるのでしょうか。
欲しい情報に辿り着けない
インターネットが一般に普及し始めたのは、MicrosoftがWindows95を発売した1995年頃です。それから2024年現在で、約29年が経ちました。1995年から2024年までの約29年間、インターネット上の情報は増え続けてきました。特に2005年頃までは、その増加量は比較的緩やかだったように感じます。
しかし、2004年にFacebook、2006年にTwitterが登場し、さらに同年10月にはGoogleがYouTubeを買収するなど、2006年頃からインターネット上の情報量は爆発的に増加し始めました。2010年代に入ると、スマートフォンの普及とSNSの爆発的な広がりによって、情報量はさらに増加しました。
人間の認知を凌駕する情報量
そのため、2024年現在では、インターネットで情報を探すには、多くの時間と労力が必要になっています。また、インターネット上の情報は必ずしも正しいとは限らないため、情報源の信頼性を確認する必要もあります。この状況は、今後ますます深刻化すると考えられます。
2024年現在、インターネット上の情報量は、人間が処理できる限界を超えています。そのため、検索エンジンで欲しい情報を見つけ出すことも難しくなってきています。
このような状況において、AIによる自然言語検索が、膨大な情報の中から必要な情報を見つけ出すフィルターとして機能することが期待されています。
結果だけを得たい心理だけではない?
当初は、「情報の即時性を求める気持ちから結果だけを得たい」という点に注目してタイパについて考えていましたが、実際には、
- 情報過多による情報疲労
- 効率性を重視する社的会風潮
- 短時間で欲しい情報に辿り着きたい
という欲求など、様々な要因が考えられます。
ググレカスの心理
かつてインターネット上でよく使われていた「ググレカス」という言葉があります。
「ググレカス」とは、2000年代初頭に「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)で生まれたスラングで、「Googleで検索しろ、カス」の略です。「何でも聞かずに自分で検索して調べろ」という意味で使われていました。
この言葉は、インターネット黎明期に、何でもかんでも質問する初心者に対して、苛立ちを込めて使われた言葉と言えるでしょう。結果的に、情報収集が苦手な人やインターネットに不慣れな人に、自分で情報を探すことを促し、情報リテラシーの向上に貢献した面もあったかもしれません。
しかし、「ググレカス」は相手を見下すような強い言葉だったため、人に質問することをためらわせるような雰囲気も生み出してしまった可能性が否定できません。そして「ググレカス」という言葉が、情報収集に対するプレッシャーとなり、情報過多の現代において、人々を疲弊させている側面もあるのかもしれません。
情報収集の自己責任論
また、自分が知りたい情報を自分で収集するという考え方は、「情報に振り回される」「情報に騙される」ことも自己責任であるという「自己責任論」につながる可能性があります。その結果、情報収集能力や情報リテラシーが低い方々が不利な立場に置かれ、情報格差が拡大する一因となった可能性も考えられます。
情報過多による情報疲労の結果
欲しい情報になかなかたどり着けない場合、興味のある情報が掲載されているWebサイトを閲覧したり、SNSアカウントをフォローしたりすることで、情報収集を効率化できる場合があります。例えば、ゲームに興味がある人なら、ゲーム情報を専門に扱うWebメディアやSNSアカウントをフォローすることで、最新の情報にいち早くアクセスできます。
しかし、扇動的な記事ばかりを掲載しているWebサイトや、写真や動画を無断転載しているSNSアカウントが存在していることを忘れてはいけません。
手軽なエンタメの危険性
そのようなアカウントをフォローすると、手軽にエンタメを楽しめるというメリットがある一方で、著作権侵害に加担してしまったり、SNSの無限スクロールに夢中になってしまったりする可能性があります。
そのため、時短や効率を意識して情報収集しているつもりが、かえって時間を無駄にしてしまう可能性があります。しかし、情報疲労を感じている人ほど、手軽に情報を得たいという思いから、無断転載アカウントに惹かれてしまうのかもしれません。
しかし、無断転載アカウントの運営者は、インプレッションの獲得や詐欺行為など、様々な目的でフォロワーを集めている可能性もあります。なお、手軽なエンタメには、SNSの無断転載アカウントだけでなく、無料ゲーム、ショート動画、まとめサイトなども含まれます。
利用者が認識できないアルゴリズム
また、SNSでは、閲覧履歴などに基づいてアルゴリズムが利用者の好みに合わせた情報だけを表示するため、「フィルターバブル」と呼ばれる状態に陥ることがあります。
例えば、特定の動画や写真を好んで見ていると、「おすすめ」に同じような動画や写真が表示されるようになります。これは、アルゴリズムによってフィルターバブルに陥っている状態と言えるでしょう。
その結果、ついついサムネイルをクリックしてしまい、無限スクロールに時間を奪われ続けるという無限ループに陥ってしまうのです。利用時間の制限やデジタルデトックスなどを通して、本当の意味でのタイパについて考えてみる必要があるのかもしれません。
とにかく結果を求めてしまう
検索サイトで映画や漫画のタイトルを入力した際に、「ネタバレ」という検索候補が表示されるのは、結果だけを求める人が増えていることの表れかもしれません。
ネタバレを見て「そういう内容なのか」で終わるのではなく、ネタバレを見た上で「どのような過程を経て、その結末に至るのか」と考えながら映画を観たり、漫画を読んだりすることで、新たな発見があるかもしれません。
まとめ
「タイパとは何か?」という疑問から始まった今回の考察を通して、情報に追われ、限られた時間の中ですべてを処理しきれずにいる現代人の姿が見えてきました。
情報過多は今後も悪化の一途をたどると考えられます。AIが検索のフィルターとして機能するようになれば、ある程度の負担軽減は期待できるかもしれませんが、根本的な解決にはならないと感じています。
だからこそ、効率化、情報の即時性にこだわり過ぎず、時には時間をかけてみる、時にはデジタルデトックスをしてみる、など情報とうまく付き合っていく必要があると感じています。