旅行先や飲食店で注文した料理を待っている間、店内の入り口付近に設置された、地元の求人情報やイベント情報が掲載されたフリーペーパーをよく読んでいました。

僕はデザイン業なので、「様々なデザインに触れる」という目的もありました。しかし、それ以上に、地元の様々なイベント情報を知り、週末の予定を考えることが好きでした。

ところが、数年前から飲食店を含め、様々な店舗でフリーペーパーを手にする機会が激減したように感じています。その理由を考えてみたいと思います。

そもそもフリーペーパーが減った?

まず、フリーペーパーが減ったような気がしています。これは、環境保護やSDGsの推進により、休刊や廃止、あるいは電子版に移行などが考えられそうです。しかし、最大の要因はスマートフォンの登場により、手軽に情報を得られるようになったことで、フリーペーパーを読む人が減り、発行部数の減少や休刊が相次いでいるのではないかと感じています。

また、企業や店舗も費用対効果の観点からインターネット広告に予算を集中させている傾向があり、フリーペーパーへの掲載数も減少していると考えられます。

こうした状況を受けて、多くのフリーペーパーは電子版やアプリ化などデジタル化に移行したと考えられます。また、発行側としても、電子版への移行によってデザイン作業や印刷、配布コストが抑制できることがデジタル化を促進させたと考えられます。

電子版に移行すれば読んでもらえるのか

店舗に設置されるフリーペーパーの強みは、地元住民に手に取ってもらいやすいことだと考えています。しかし、デジタル化によって、地元住民が地元のフリーペーパーの電子版を積極的に見に行くかと言うと、なかなか難しそうです。

従来のフリーペーパーの場合、1ページに複数の店舗情報が掲載でき、自然と目に入る情報も多くなります。しかし、電子版の場合は、掲載する店舗や企業ごとのページが分かれるため、利用者は気になる情報しか見に行かない傾向があるように感じます。

インターネットは全世界から閲覧可能ですが、地元情報しか掲載されていないフリーペーパーの電子版は、地元住民に見てもらわなければ意味がありません。しかし、飲食店での待ち時間にスマートフォンを利用している人が、フリーペーパーの電子版を見ている可能性は低いでしょう。

つまり、電子版に移行すると、紙媒体として発行していた頃に比べて、訴求したいターゲットに情報が届きにくくなっている可能性があります。

掲載されている情報にオリジナル性がない

電子版は、従来のフリーペーパーと異なり、検索サイトからの流入が期待できます。また、スマートフォンでの検索の場合、検索結果が位置情報に基づきパーソナライズされる可能性もあります。しかし、掲載されている情報によっては、検索サイトからの流入は期待できないかもしれません。

まず、検索サイトはクローラーと呼ばれる情報収集用プログラムを使って情報の収集を行い、利用者に有意義な情報が掲載されているかを判断します。一般的な情報しか掲載されていない場合は、検索サイトに登録されない可能性があります。

従来のフリーペーパーに掲載されている情報は、店舗の店名や住所、連絡先、クーポン情報などが一般的です。この情報をそのまま電子版に掲載した場合、クローラーが利用者に有意義な情報が掲載されていないと判断する可能性があります。

クーポンの内容は魅力的なのか

従来のフリーペーパーと電子版に共通する課題として、クーポンの魅力が挙げられます。

フリーペーパーはクーポン情報を掲載することで、店舗の認知度向上や集客を促してきました。しかし、最近はd払い、PayPayなどの電子決済の利用が、店舗選びの重要な要素になっています。利用者はクーポンでお得に利用できる上に、電子決済を利用することでポイントも貯めたいと考えています。

しかし、電子決済には決済ごとに手数料が発生するため、導入をためらう店舗もあるでしょう。利用者の「ポイ活」ニーズの高まりを考えると、クーポンと電子決済のバランスは、今後も難しい課題となりそうです。

しかし、電子決済には決済ごとに手数料が発生するため、導入をためらう店舗もあると思います。ただ、利用者によっては、クーポンの内容よりも、様々な店舗やサービスで利用できる電子決済で貯まるポイントの方に魅力を感じている可能性があります。 利用者の「ポイ活」ニーズの高まりを考えると、クーポンと電子決済のバランスは、今後も難しい課題となりそうです。

Webサイトの運用コストが発生する

従来のフリーペーパーを電子版に移行する場合、利用者にとって魅力的なサービスを提供するために、ログイン機能やクーポンの保存機能などを充実させる必要が出てきます。さらに、読者参加型のコンテンツなども必要になるでしょう。さらに、システム障害などで電子版が閲覧できない場合の対策も必要です。

結果として、従来のフリーペーパーよりも運用コストが高くなることも視野に検討する必要があります。

多角的な情報発信を考える

フリーペーパーの電子版に掲載を考える場合、電子版は情報発信するための1つの手段と意識する必要があります。掲載後は問い合わせが増えるかもしれませんが、それは一時的な効果でしかなく、日常的に情報を発信し続けることが重要になります。

最近では、スマートフォンがあれば手軽に情報発信ができるために、Webサイトを持たずに、SNSだけで情報発信する店舗をよく見かけます。

SNSでは、検索サイトに情報を収集されないように、クローラをブロックするなどの対策が講じられている場合があります。また、ログインしないと情報が閲覧できないように対策されている場合もあるようです。そのため、SNSに投稿した情報は、日常的にSNSを利用しているフォロワーにのみしか訴求できていない可能性が高く、多くの方に情報を届けたい場合、SNSだけでの情報発信は難しいと感じています。

さらに、SNSのアルゴリズムや仕様は、運営側の意向でいつでも変更される可能性があります。 例えば、2025年1月17日頃には、Instagramのサムネイル一覧画面が正方形から縦長の長方形に切り替わったと、様々な利用者がSNSで報告をしていました。Instagramでは3点、6点、9点の写真を分割して投稿することで、大きな1枚の写真として掲載する方法がありますが、サムネイルの縦横比の変更により、ズレる問題が発生しています。

SNSはスマートフォンのアプリが提供され、基本無料で利用できるため、SNSでの情報発信は初期投資を抑えることができます。しかし、突然、アルゴリズムや仕様が変更され、これまでのブランディングが全て無駄になる可能性も孕んでいます。 そのため、情報発信をする場合は、SNSだけに頼らず、多角的に考える必要があります。

コラボレーションする場合の注意点

インフルエンサーに依頼する場合でも、同じことが言えます。特定のSNSでのみ情報発信をしているインフルエンサーより、Webサイトやブログ、SNSなど多角的な情報発信をしているインフルエンサーに依頼をする方が、情報の拡散が期待できます。

なお、僕なりに多角的に情報発信する重要性を考察した「確実に情報を届ける方法を考える」がありますので、ご興味があればご一読いただけると幸いです。

独自コンテンツを充実させる

検索サイトからの流入を強化する場合、地域密着型の独自コンテンツを提供することで、読者の関心を惹きつけ、信頼性や回遊性を向上させることが可能になります。また、地域のイベント情報を掲載することで、フリーペーパーの存在を知らなかった地元住民に対しても、情報の訴求が行えるようになります。

検索結果に表示されるためには、クローラに利用者に有意義な情報が掲載されていると認識される必要があります。その結果、クローラに評価されるコンテンツ制作を行いがちになりますが、「利用者にとって有意義な情報が掲載されているか」を意識することが大前提だと考えています。

最後に

フリーペーパーは、スマートフォンの普及により様々な課題に直面しています。電子版の改善や地域密着型のコンテンツの充実させるなど、今まで以上に読者を想定した取り組みが必要になると感じています。

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2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市にて、Webサイトの制作、更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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