僕は2010年3月31日(大安)にWebサイトの制作を専門にする在宅の個人事業主になり、2025年で15年目を迎えます。ほぼ1日中、ディスプレイを眺めて、何かをぶつぶつ言いながら過ごしています。
これまでに、会社員の友人から幾度となく「自宅で仕事ができて羨ましい」と言われ続けてきましたが、自宅で仕事ができるからといって、気楽かというと、そうではない部分も多くあります。
今回は、約15年間の在宅の個人事業主としての経験や悲哀を織り交ぜつつ、ブログに残してみたいと思います。
なお、このブログで書かれている内容は、僕の個人事業主としての経験であり、テレワークで働く方の経験とは異なる部分があることに留意してください。
自宅で仕事をする利点
自宅で仕事をしているため、通勤や退勤の移動が必要ありません。それにより、通勤時間に使っていた時間で、朝をのんびり過ごしたり、始業時間に縛られることもありません。
また、雇われているわけではないため、クライアントさんに「午後から打ち合わせで外出します」と伝えて、実際は打ち合わせにいかず、映画を観に行くことだってできます。
つまり、在宅の個人事業主の最大の利点は、時間の使い方、仕事の受注の選択、様々な場面での判断などが、僕の自由であることではないかと考えています。ただ、その自由を守るために、自分なりのルールや努力が必要です。
信頼されることが最優先
クライアントさんも、僕の普段の言動から、打ち合わせではなく、映画を観に行っているだろうと気がついてるかもしれません。ただ、それによって、制作スケジュールが遅れることは許されません。
また、働き方の変化により、最近では、ほぼなくなりましたが、金曜日の夕方に資料を提供され、月曜日の午前中までに仕上げてほしいと依頼されることがありました。
こちらの状況を考慮せず、自分の都合で依頼してくる方も少なからずいましたが、普段から何かとお世話になっている方からの依頼で、「本当に困っているのかも」と感じれば、できる範囲で対応するように心がけてきました。
制作スケジュールは厳守する、相手が困っているときは全力で対応するなど、これまでの小さな信頼の積み重ねが、打ち合わせと言いつつ、本当は映画を観に行ける環境を生み出せるのだと感じています。
個人事業主の自由の価値観が怪しくなった
個人事業主の中には給料やボーナスへの憧れを忘れるために「自由を得るために給料を捨てた」と考えて必死で頑張っている方が少なからずいます(意見には個人差があります)。しかし、それが新型コロナウィルスによって、大きく変化することになりました。
コロナ禍により、世間の働き方が大きく変わり、会社員として自宅で働く、テレワークと呼ばれる働き方が登場しました。それにより、会社員でありながら、個人事業主のような時間の自由があるように見える働き方は、個人事業主の僕にとって大きな衝撃でした。
終わりが見えないコロナ禍によって仕事が激減していた中で、「個人事業主には自由がある」という心の支えまで奪われたような感覚でしたが、世間でテレワークが始まってすぐに、友人たちから、「自宅で仕事に集中するなんて無理なんだけど!どうやって仕事をしているの?」と聞かれることが増えました。
突然、友人からそんなことを聞かれて「あれ?俺はどうやってるんだっけ?」と、自宅で働くことが当たり前になっていた中で、自分がどのように対策をして、対応してきたかを振り返るきっかけになりました。
制作作業に集中するのが難しい
思い返せば、在宅の個人事業主になった2010年の頃の僕は、まだ会社員としての感覚が強く、そして、まだ幼児だった長男の相手もあり、テレワークを始めたばかりの友人と同じように、仕事が思うようにできなかったことを覚えています。
大阪府から山口県の妻の実家に引っ越しをした際に、就職先が見つからない場合は、「個人事業主になるかもしれない」との思いがあり、妻の実家の余っていた部屋の1つを、作業部屋として利用できるように準備をしていました。
とはいえ、作業部屋があるからといっても、作業中に家族から定期的に話しかけられ、会社で働いていた頃のようには制作作業に集中できませんでした。また、当時はまだ、自分でも理解していませんでしたが、僕がADHDだったことで、集中できるまでに時間が要することがあり、定期的に話かられることに大きなストレスを感じていました。
そんな中で、僕が自分なりに考えて、実行してた対策を紹介します。
早寝早起きをする
家族に「9時から18時はなるべく話しかけないで」と伝えたとしても幼稚園に入園前の子供が、5分おきに「少し待ったけど、遊べますか?」と話しかけてくることが日常茶飯事でした。でも、そんな理由で家族を怒るのもどこかおかしな気がして、我慢していましたが、やっぱり、制作作業に集中できないことは、大きなストレスになっていました。
そこで、「数年後には幼稚園に入園する」と考えて、それまでは、全力で遊んで、しっかり昼寝をさせようと、毎日、昼食後に、公園で遊び、近所の商店でお菓子を買って食べ歩く、みたいな生活を、子供たちが入園するまで、数年間続けました。
そのため、子供たちが入園するまでの毎日は、子供たちと20時に寝て、僕は4時に起きて、仕事を始め、8時頃に子供たちを起こして、一緒に朝食を食べて、9時すぎに仕事に戻って、みたいな生活でしたが、毎朝、4時間誰にも邪魔をされない時間を作ることで、ストレスの軽減につながりました。
子供が成長した今では、そこまで大変ではなくなったものの、春休みや夏休みなどの長期休暇期間は仕事に集中しにくくなるために仕事の進行速度に影響が出ます。在宅の個人事業主は、家族の状況の変化に合わせて、定期的に働く環境を調整することが必要になります。
思っている以上に色々やってくる
常に自宅にいるため、妻や子供から話しかけられる以外に、近所のご老体がよくやってきます。僕が暮らしている場所は比較的田舎で、高齢化率が高いため、自治会の役員を引き受けられる方が少なく、様々な役員を頼まれがちです。
正直、最初の頃は、彼らは、突然自宅にやってきて、役員を押し付けてくる、僕の仕事の邪魔をする鬱陶しい存在だと感じることがありました。しかし、嫌々ながらも彼らとやり取りすることで、徐々に共助の関係性が生まれてきました。今では、魚や野菜、お菓子などをいただいたり、「いつも頼むと申し訳ないので、今回はこっちでやっておくから!任せておけ!」と言い合える関係になっています。
その結果、現在では、自治会の役員や数年おきに開催している地元の祭りの実行委員会の役員、商工会の役員や行事の手伝い、また、子供が通う中学校のPTAの役員を数年にわたり、引き受けています。
少しは誰かの役に立っている感覚を味わいたい
PTAの役員は、子供が学校に在籍している期間しか任期がなく、終わりが見えていることで、自治会の役員よりは精神的な負担が少ないとはいえ、やっぱり「やる必要がないならやりたくない」が本音です。
しかし、会社員の保護者がPTAの役員として会議や行事に参加するには、有給休暇を申請する必要があるだろうし、そのためには、仕事の調整や根回しが必要になるだろうと感じています。
そこで、自分のタイミングで時間が調整できる、個人事業主の僕が引き受けることで、多少は、社会に貢献している気持ちを味わいたいという思いもあります。
1日中、自宅に閉じこもり、家族以外と会話をしない日々を過ごしがちの僕が、外出をするきっかけや、社会との接点の維持を動機付けにして、本業を圧迫しない範囲で、役員を引き受けています。
自宅で黙々と仕事をしている個人事業主は、毎日のようにクライアントさんとやり取りをしているのに、意外と孤独を感じがちです。地域の方々との繋がりが心の支えになっている部分は少なからずあるかもしれません。
最後に
個人事業主の繁忙期は年末年始や年度末など、ある程度予測ができますが、それでも繁忙期や閑散期は突然やってきます。特に、閑散期に入ると、社会から必要とされていないような感覚に陥ることがあります。そんな時に、地域の方々との繋がりが、心の支えになることがあります。
しかし、繁忙期に自治会などの役員として、地域の運動会やお祭りの準備などが重なると、睡眠時間を削り、ゲームで遊ぶ時間を削り、必死で対応せざるを得ない場合があります。また、ADHDの特性も相まって、作業の順位付けに苦戦することもあり、面倒に感じることに変わりはありません。
それでも、自分の心の支えのため、仕事と心のバランスを取りながら、それとなく、地域に貢献できればと感じています。
僕は!毎日!家にいますが!決して!暇ではありません!
そこのところを、ご理解いただけると幸いです。